カラスさんとの対話 その四
「(♪口笛)ほーっほっけっきょ。けっきょけっきょけっきょ」
ぎんちゃんは真剣な表情で口笛を鳴らしています。
「なんだ、なんだ? この変な鳴き声は?」
カラスは変な音が聞こえてくる方角に耳を傾けて、意識を集中させました。
「(♪口笛)ほーっほっけっきょ。けっきょけっきょけっきょ」
「なんだよ、気分悪いな」
カラスはあたりを見回しました。すると
「ピッピッピッピッ! わかんないのかい、ここだよ」
と、ぎんちゃんがやってきました。
「なんだよ、ぎんちゃんかい。変な鳴き声を出すなよ。びくびくしたよ」
「カラスさんは意外に臆病だね。イタズラばかりするのに。何故だい?」
「イタズラじゃないよ。好奇心旺盛なのさ。ぎんちゃんのやることは、すべて気になるから見ているよ。いなくなったら、すぐに何なのかを確認したくなるのさ」
「だから賢くなったのかね。だったら、人間ともっと仲良くできないのかい? いつも微妙な距離感だね」
ぎんちゃんはもっとカラスと仲良しになりたいのです。今日は思い切ってその胸の内を話してみました。
「地上に降りるのは恐怖なんだよ。空とは違う。凄く慎重になる。地上ではくつろげないよ。鳩さんが不思議でしょうがないよ。なんで人間を恐れないのか」
「人間と協同してきたからだよ。でも、これからはいよいよカラスさんの時代と思ってるよ。もっと協同しないかい?」
「飼い慣らされるのが嫌なのさ。猫さんみたいに、家から出られないのは地獄だよ」
「鳩さんは住み処をあたえられ、昼は自由に飛び回ってるよ。ダメかい?」
カラスは少し考えてから言いました。
「鍵かけられるよ。自由でいて協同があれば考えるが。餌をもらうと従順になっちまうからな。好奇心が無くなる。飼い犬、飼い猫の目は死んでいる。本来の闘争心は皆無だ。人間だって同じだろう?」
「わかるよ。だから対等の協同だよ」
「対価は餌かい。そこで野生の本能がおかしくなる。都会のカラスが、人間の残飯を餌にして食いつないでいるのは情けない。自然の中で生きないといけない」