カラスさんとの対話 その三
「おはよう、ぎんちゃん。今日もいい天気だ。体がゆるむよ。さあ、昨日の話の続きをしようか」
「カラスさんから声を掛けるなんて珍しいね。どうしましたか?」
カラスの機嫌を損ねないよう、ぎんちゃんの言葉遣いはていねいです。
「なんだよ。カラスは好奇心が旺盛だから、どんどん確かめたくなるんだよ。早く、さいたま市のこの地が住みやすいか、とか話そうよ。ワクワクするよ」
「乗り気だね。なんかたくらんでないかい?」
「バカにするな。餌が多くなりそうな場所を聞こうなんて思ってないよ!」
カラスの口から思わず本音がポロリ。ぎんちゃんはニヤリと口角を上げました。
「そうだね。そんな感じの相互の利益で話そうよ」
「だましあいは無しだよ! ぎんちゃん」
カラスは慌てて言いました。
「では、カラスさん、さいたま市は住みやすいかい?」
「ビルが多い市街地は、森が少なくてだめだね。食い物はあるが、人間が多くて邪魔だ」
「カラスさんが住みやすいのは、森と住宅地かい?」
「本当は、森、畑、田んぼ、住宅地が一緒にあると良いね。ねぐらと餌が一年を通してあるから」
意外としっかり考えているんだなあ、とぎんちゃんは思いました。
「市街地のカラスは人間を恐れないね。平気で歩き回って、餌を漁っているよ? 何故だい?」
「本来、警戒心が強いが、完全に麻痺しているんだ。都会の人間はカラスを追い払わない。利害関係のない人ばかりだから、カラスは平気になる。この平和な土地のほうがビクビクするよね。ぎんちゃんは野菜泥棒!と怒鳴るし、猫もいる。地上は注意するよね」
カラスは「やれやれ」といった表情で話します。
「知らないよそ者ばかりの土地は良くないね、確かに。やはり、このあたりが住みやすいということなのかね?」
「ビルと幹線道路が近いと良くないね。ビルは暑い、車はうるさいしね。夜、寝られない。自然があって、幹線道路から外れたところで、そしてレストランが程よくあるといいね。ラーメンは最高にうまい! 脂ぎった残りかすは体に染み渡る。結構、この辺のカラスは大きいだろ。色艶もいいし、高脂血症かね」
「不健康じゃないか」
「だから、栄養バランスを考えてよく、ぎんちゃんの野菜を、口直しにいただくのさ。悪いね」