俳句・短歌 四季 2021.05.28 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第55回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 宵闇よいやみに巡るを偲しのぶ満月が 樹木の上に黄色く光る 命満つ自然の中に生かされて 愛の人へと変えられて来た 江南に朝陽あさひ照り付けジリジリと あっと言う間に夏日来る哉
小説 『大阪弁で読む『変身』[注目連載ピックアップ]』 【第2回】 作者/フランツ・カフカ 翻訳者/西田 岳峰 【カフカの名作を大阪弁で!?】「グレゴール!まだ家におったんかいな。 どないしてん?」名前を呼ばれて答える自分の声にギョッ!? それに列車に追いついたところで社長の大目玉は避けられん。なんせ使用人が五時の列車に合わせて待っとってグレゴールの遅刻をとうにチクっとるわけやから。こいつは社長のお気に入りやった、性根も頭もないくせに。それか、病気や言うたらどないか? いやいやこれほどカッコ悪うて怪しい言いわけもなかろう、グレゴールは五年勤める間病気になったためしがない。社長が健康保険組合の医者を連れて来て、両親をグータラ息子のこ…
小説 『浜椿の咲く町[人気連載ピックアップ]』 【第17回】 行久 彬 客足が鈍る雨の日は…時間が経つのも忘れちゃう買い物で気晴らしを! 美紀が岬の高台に出掛けた母の命日から二月ほどが経ち、志摩地方も梅雨の季節を迎え、雨のそぼ降る鬱陶しい日が続いていた。その日は漁火の二階の部屋で雨音を聞きながら目が覚めた。「今日も雨か」と思いながら美紀は憂鬱な気分になった。雨の日は喫茶店やスナックの客足が伸びないのだ。観光客の来店などは雨に祟られここしばらく皆無に近い状態だった。「今日は喫茶店を閉めて気晴らしに鵜方に買い物にでも行くとするか」降る…