パーソナルブランディング
それでは医療経営においてパーソナルブランディングが必要な理由は何でしょうか?
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まず、インターネットの普及で医師や病院の実力が明らかになり、医師・患者間の情報の非対称性が解消されたことがあります。
従来は職場に近いとか、知人の勧めとかで病院や医師を選んでいましたが、現在は自己の症状や疾患にマッチした病院や医師を選択し、得意とする医療の内容や専門医資格、経歴などの情報も丸裸です。
一方で、診療ガイドラインや高度医療機器の普及による医療のコモディティ化で医師あるいは病院間の差別化が困難になってきています。自身の強みをアピールしてブランディングしないと生き残れなくなっています。
また、新臨床研修制度導入による大学医局制度の崩壊でキャリアパスを医師自身が形成しなければならなくなっています。
従来は自身の価値を創造しなくても医局の指示通り異動していればよかったわけですが、自身の強みをアピールして市場での価値を高める必要性が出てきたわけです。
AIやIoTの普及によって人材のコモディティ化が進むと、一層その傾向は高まると予想します。今後の病院経営には、優秀な医師の確保が最優先事項ですが、若手医師は自身をブランディングしてくれる病院を求めています。ピーター・モントヤは、パーソナルブランディングのサポートがプロフェッショナルマネジメントの核になると言っています[19]。
しかし、病院はブランド化よりもむしろコモディティ化した人材の方が、病院の意向に従わせやすいという負のインセンティブを持っています。
また医師個人をブランド化すると、他病院に引き抜かれたり、強い交渉力(例えば、高い報酬を要求するなど)を誇示してくるリスクもあります。
医師個人のブランディング戦略に関しては戦略的医師マネジメント(第10章)で詳しく述べたいと思います。