組織行動論と戦略的人的資源管理
・病院経営では医療者の幸福の追求が最優先課題であり、いかに組織で働く人の組織コミットメントを高めていくかが重要です。
・個人の目標と組織の目標をマッチさせ、長期のキャリアパスを構築することが重要です。
組織とは?
人が2人以上集まると組織となり、われわれはさまざまな組織に属しています。そもそも組織が存在する目的は何かという問いかけがありますが、その答えは次の3つに集約されると思います。
①特有の使命や目的を果たすこと、
②働く人を幸せにすること、
③社会に貢献すること
です。組織行動論とは組織で働く人々の行動を本質的に理解する学問で、「なぜ人は働くのか」「働くことのどこに喜びを見出すのか」を考えます。
それでは医療組織における組織行動を分析し、どのように人的資源管理を行うべきかを考察します。
サービス業としての医療と職務満足度近年医療もサービス業と言われますが、通常のサービス業との違いは、人命に関するサービスであり、サービスを提供する上でのリスクが大きいこと(不確実性)、命は平等であり公平性と高い倫理観が求められることや、専門職を活用した対人サービスであることなどが挙げられます。
従来、サービス業では、サービス提供者の職務満足度がサービスの質に影響するとされてきました。働く人をも顧客と考えて職務満足度を上げることをインターナルマーケティングと呼び、近年注目されています。
特にサービス業において、CSが顧客との接点にいる従業員の満足を高め、満足した従業員がさらに魅力的なサービス提供をすることで、CSを高めるという好循環サイクルのことをサティスファクション・ミラー(satisfaction mirror)と呼びます。
ハーバード・ビジネススクールのジェームズ・L・ヘスケット教授らが提唱した概念で、従業員満足度が上がる結果、生産性も高まることが知られています。
職務満足度に関してはさまざまな定義がありますが(図表1)、現在はLockeの定義を用いて、「職務遂行状況において、個人の価値が満たされ、好ましい情動状態に繫がること」と定義することが多いです。
近年、勤務医の大量退職やバーンアウトによる地域医療の崩壊、看護師不足による病棟閉鎖などが報道されています。それでは職務満足度は定量化できる指標なのでしょうか? 企業における職務満足度の尺度として次の3つの尺度が有名です。
・JDI(The Job Descriptive Index)
・MSQ(Minnesota Satisfaction Questionnaire)
・JDS(The Job Diagnostic Survey)