英国国立ウェールズ大学経営大学院にて医療経営学修士号を取得した臨床医が、現代の医療経営の諸問題を追及します。
ブランディング戦略:実品質と知覚品質(認知品質)
ブランドが提供する価値とは何か?
それではブランドはどのような価値を提供しているのでしょうか?
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ブランドが提供する価値には機能的便益、情緒的便益、自己表現的便益が存在します(図表4-4)[18]。
機能的便益とは伝統的日本企業が求めてきたもので、ブランドの属性や特徴(便利、高品質、信頼、安全、効率的)を意味します。情緒的便益とはブランドによってもたらされる心理的高揚感や充実感を指します。
具体的には、新型iPhoneXに見られるように前日から店に並んで買うような熱狂的な購買客は心理的高揚感を買っていると考えられます。
他にも自動掃除ロボットのルンバを使用している人はフローリングの高層マンションでリッチな暮らしをしている都会派のお洒落な人といったイメージがあります。
自己表現的便益の例としては、トヨタのプリウスやハーレーダビッドソンなどがあります。
プリウスはハイブリッド車で燃費が良く環境に優しい車ですから、プリウスに乗っている人は地球環境に配慮できる善良な市民といったイメージがありますし、ハーレーダビッドソンに乗ってツーリングする人は、輸送手段としてのオートバイではなく、自らのステータスやアナーキーな生き方(意外と所有者に公務員や弁護士などが多いとのうわさもあります)など自己表現のツール(自己表現的便益)としてハーレーダビッドソンを用いていると考えられます。
日本製品は機能的便益においては国際的にトップレベルの製品を作りながら、ブランド構築が苦手です。日本の時計会社(カシオ、セイコー、シチズン)の失敗とは対照的に、スイスの時計会社(スウォッチ、リシュモン、ロレックス)は、ブランディング戦略に成功しています。
国内のカシオ、セイコー、シチズンの3社の売上を合計しても、スイスの上位3社のいずれにも勝てていません。消費者は商品そのものではなくブランド性やストーリー性を購入しているわけですので、
日本の商品も機能的便益の向上のみでなく、情緒的便益や自己表現的便益の向上を進めていく必要があります。