第5章 医療関連企業のための経営学
医療関連企業に向けて本章では医療に関わる製薬企業・医療機器メーカーの経営戦略などについて述べたいと思います。
企業にお勤めの方は既にMBAを取得された方や、社内研修などで経営に関するセミナーを受けておられる方が多いと思いますが、基本的なイノベーター理論や製品ライフサイクルの視点をご紹介し、その後に新しい医療マーケティング戦略について解説したく思います。
さらに本内容は企業の皆様のみならず、病院で働く医療職や院外薬局の薬剤師の皆様にも役に立つ内容です。
イノベーター理論(図表5-1)
スタンフォード大学のエベレット・M・ロジャース教授が1962年、『Diffusion of Innovations』(邦題『イノベーション普及学』)で提唱し、商品購入の態度を新商品購入の早い順に5つに分類したものです。
①イノベーター(Innovators:革新者)
新商品が発売されると最初に買う人たちで、商品そのものの利便性よりも、新規性や革新性を尊重します。市場全体の約2.5%を構成します。医師であれば、主に大学病院や基幹病院などの専門医で、臨床試験に参加されるような医師が該当します。
自身の専門領域においては、常に最新技術や情報に興味があり、影響力が強い一方、薬剤の価値そのものよりも、新規性や革新性に興味があるだけで、処方のターゲットにはあまりなりません。
もちろん、当該領域のキーオピニオンリーダー(key opinion leader:KOL)となる医師がほとんどですから、新発売講演会の演者や研究会の世話人として招聘の対象となります。
②アーリーアダプター(Early Adopters:初期採用者)
流行には敏感で、新商品が発売されると流行になる前に入手する人たちを指します。自ら情報収集を行い判断する初期少数採用者のグループで「オピニオンリーダー」となって他のメンバーに大きな影響力を発揮することがあります。
市場全体の約13.5%を構成します。医師であれば、新発売後すぐに採用を検討する医師で、大学病院ほか病院勤務の専門医や、開業医でも専門医の場合はこの層に含まれます。
KOLが多く、医薬品でもこの層が普及拡大を図る上で最重要です。地域別講演会の講師として招聘する医師や座談会に参加頂く医師のほとんどは、この層に属します。