七〇七号室
アッキーママは大滝ナースの言う通り制服を着ようとした、が、これのどこが可愛くてお洒落なのだろうか、ただのジャージであった。
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それに赤なのかエンジ色なのか、曖昧な色はどこか寂し気で暗い色である。チャックもボタンもポケットも付いてはいなかった。
上着を肩からそして首を通しズボンをはいた。とても地味でお洒落とはほど遠いじゃないか、アッキーママはちぇっと思わず口に出してしまった。大滝ナースの噓つきと思いかけた時、これって刑務所の制服に似てるような気がした。
だが、そんなつまんない考えはすぐに消えてしまった。レストラン・菜はどんなところだろう、どんな人がいるのだろうか。
さぁて、今日のお昼ご飯は何だろう、アッキーママはルンルンと小躍りして歩くより本当は、スキップしたい気持ちを抑えてレストラン・菜へ向かった。
レストラン・菜
なんだろうか、地下七階というのに一階フロアまでの高い、うん~と高い吹き抜けは、レストラン・菜の空間をものすごく広く大きく感じさせていた。
窓ガラスは透明ではないのだから外の景色はまったく見えない。けれどかえってその乳白色のガラスからこぼれ落ちる鈍い光はどこかほっと安心感があり心地良さをかもしだしてアッキーママを迎え入れてくれた。
そう言えば今日の天気はどうなのだろう。雨か台風か、それとも快晴か、曇りか、雪のはずはないだろうけれど、ここはいつでも気温が二十度、常夏ハワイアンズだった事をアッキーママはすっかり忘れていた。
暑くもなく寒くもない、そして季節を感じるものは何ひとつ無かった。日付を気にすることも無い。ただ、アッキーママは火曜日と金曜日の週二回、ドクターの診察があった。それだけを覚えていれば良かった。
大滝ナースに文句を言っても、ドクターと相談してね、ドクターと相談してねと少し困ったような顔を無理に作って笑うだけであった。
レストラン・菜にはすでに五、六十人はいるだろうか、ものすごい人混みである。お正月の福袋を買い求める人達のように集まってワゴンカートに群がっている。