俳句・短歌 歴史・地理 歌集 歴史 2021.02.10 歌集「風音」より三首 歌集 風音 【第28回】 松下 正樹 何気ない日常にある幸せを探しに。 優しい風を運ぶ短歌集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 なだらかな坂多き街 白波の 寄せては退きし証しを刻む 崖ぞひにこんこんと湧く泉あり 縄文人の水汲みしところ あざやかに紅(あか)く粧(よそほ)ふ丸(まろ)き壺(つぼ) 弥生の土器が掘り出ださるる
エッセイ 『プリン騒動[人気連載ピックアップ]』 【新連載】 風間 恵子 「そんなプリンなんか作ってないで、早くメシのしたくしろ!」台所で一挙手一投足に怒り狂う義父。言葉の暴力が鉛となって心臓を突き抜けた。 ある晩のことだった。三人で、夕食のしたくをしていた。この三人と言うのは、舅(しゅうと)・姑(しゅうとめ)・嫁すなわち、私の事である。台所は女の神聖な場所と考えられているのではないか。しかし、この家では、舅が当たり前のように立つことが多い。自分が調理したものは自慢をするが、人の作った料理は決して、美味しいとは言わない。逆に貶す事に喜びを感じるタイプである。野菜の切り方から、味つけまでを一つ一つ指摘…
小説 『春を呼ぶ少女』 【第7回】 桜小路 いをり 白銀に輝くオオカミ…その背後から十歳くらいの子どもが現れた。白い肌に白い髪、そして特徴的にとがった耳。エルフだ。 リリーは、その首をねぎらうようにとんとんと叩き、手綱を握り直します。森の入り口に着くと、フルールはひと声、大きく鳴きました。しんと静まり返った森に、フルールの鳴き声がやわらかく広がっていきます。「ありがとう。始めましょうか」その言葉を合図に、ふたりは走り始めます。リリーは、頬に当たる風の冷たさに思わず目を細めました。後ろへ後ろへと流れていく景色は、冬から春に変わっていきます。硬く縮こまっていた草…