俳句・短歌 歴史・地理 歌集 歴史 2021.03.31 歌集「風音」より三首 歌集 風音 【最終回】 松下 正樹 何気ない日常にある幸せを探しに。 優しい風を運ぶ短歌集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 電車より降り立つ駅のホームには あふるる秋風わが身をめぐる 地下鉄にスマホをいじる人たちの 七人掛けに七人坐すわる 十両じゅうりゃうの長くかがやく灯ひの電車 轟音ごうおんを残し闇に遠とほざかる
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『北満のシリウス』 【第14回】 鎌田 一正 1945年8月7日、満州ハルビン。喫茶店で話す日本人家族。「悪い人なの?」「日本人側から見て悪者になったってことでしょう?」 「え~と! どれにしようかな?」そう言いながら、ナツがふと見上げると、ガラスケースの向こうでは、店員の美しいロシア人少女が、ニコニコしながら、こちらを見て注文を待っている。でも、ハルは、そんなことはどうでもいいようだ。「私は、これと、これと、それと、あれと」「お姉ちゃん、そんなに一人で食べちゃうの~?」「皆で食べて、食べ切れなかったら、持って帰ればいいのよ」「フユは、自分で選びたい」「僕もだよ」…