【前回の記事を読む】文化祭で女子に告白したら、泣かれた!…その理由は、告白の後に言った無神経な一言で…

第五章「居場所」

つーっと彼女の頬を涙が伝った。間違ったことを言ってしまったかも、と一瞬思ったけど、そのあとに向けられた笑顔に緊張の糸がほどけた。

「頼りなくなんかないよ。すっごく心強い」

「雫ちゃん、俺、いつだって雫ちゃんの味方だから」

「ありがとう。その……これからも仲よくしてくれる?」

「当たり前だよ」

くしゃくしゃの笑顔を見せる隼人に僕も自然とつられる。隼人の背中を強めにたたいてよかったなと言うと、子供みたいに喜んでいる。

「雪野さん、隼人のやつ昨日僕の家でずっと泣いててさ」

「──それは言うなよ!」

三人でこんなに笑い合ったのは少し久しぶりだ。屋上から見えるのはいつもと同じ景色のはずなのに、この日三人で並んで見た夕日はしばらく見入ってしまうほどきれいだった。

 

「俺、雫ちゃんのことは諦めた」

突然隼人がそう言ってきたのは、高校三年生の春がもう終わりに近づき、新緑の季節になろうとしていたときだった。

僕は理系、隼人は文系へと進路を決めて、クラスはずっと別々だったけど、相変わらずの仲だ。今日は外でお昼を食べようと誘われたから、何か教室で話しづらいことでもあるのかなとは思っていたが、突然の話に驚いてベンチから身を乗り出していた。

「──え? なんで?」

「嫌いになったとかほかに好きな子ができたってわけじゃないけど」

「うん?」

「俺じゃないんだな、って気づいたし……」

いつもは遠慮なく自分の気持ちをはっきり言う隼人にしてはなんだか歯切れが悪い。一年生のときにフラれたとはいえ、その後も変わらず仲よくしていたし、この間は放課後二人で図書室で勉強していたとも言っていた。

小学生のときはすぐにコロコロ好きな子が変わっていたのに、雪野さんに出会ってからはあまりにも一途で、自然に応援したい気持ちになっていたのに。

「俺じゃないって? 雪野さんに彼氏ができたとか?」

「いや、それはないよ。前に聞いたことあったし」

「んー、よくわかんないけど、隼人はそれでいいの?」

隼人の言いたいことが全然伝わってこない。簡単に諦めるような性格だとも思えないし、誰よりもずっと雪野さんを大切に思ってきたはずなのに、本当にそれでいいんだろうか。

「俺はさ、友達思いだから」

「ん?」

「本当に透はそういうの疎いよな。とにかく俺が決めたからいいの」

「隼人がいいならいいけど……」

よくわからないままだけど、清々しい表情で話すからこれ以上言っても考えは変わらないんだろう。