「透は?」

「僕が何?」

「だからー……」

頬杖をついてすごく呆れた目を向けられる。

「雫ちゃんのことはどう思ってる?」

「雪野さん? 僕が?」

「そう」

「何で?」

「いいから」

ちょっと不機嫌そうにそう急かすから、少し考えてみる。 

「優しくて一生懸命でいい子だと思うよ」

「ほかには?」

「ほか? なんだか……放っておけないかな」

「…………」

そうだ、彼女のことはなんだか放っておけない。しっかりしていてなんでもできるから、僕なんてほとんど役に立てることはなかったけど、困っているときは助けたくなるし、ときどき寂しげな表情をしているのを見ると気になって仕方がない。

そういう姿は見せないようにいつもにこにこしてはいるけど、心からの笑顔を見たときは僕まで嬉しくなってしまう。六年くらい一緒にいて、彼女も僕にとっては大切な存在になっていたんだと思う。

「……おい、聞いておいて無視はないだろ」

「いや、聞いて安心したからもういいなって」

「僕は何にもわからないままだよ」

「……そのうちわかるよ」

意地悪い笑顔を向けて、僕の頭を軽く小突いて隼人は先に教室に戻ってしまった。何が言いたかったのか、教室に戻ってからもずっと考えていたけど結局答えは見つからなかった。

(そのうちわかる、か……)

高校生になったのはついこの間なんて思っていたけど、気がつけばもう大学受験に向けて本腰を入れなければならない時期になっている。授業も空気が少しぴりぴりしていて僕も気が抜けない。

そろそろ志望校を決めて、本格的にその学校の受験科目に合わせた勉強をしなければいけないけど、大学選びというのは難しい。学部がきっちり分かれているから、どんな会社に入りたいかを今のうちから考えておかなければいけない。

お母さんが「透が都内の大学を選んでくれれば家から通えるし寂しくないな」と言っていたし、僕も家族と離れてまで住み慣れたこの街から出てやりたいことも見つかっていないから都内に残るのがいいんだろうとは思っている。

次回更新は3月16日(月)、20時の予定です。

 

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