【前回の記事を読む】行方不明になって3年、誰も見つけられなかった13歳の少女…突然戻ってきた彼女は、失踪した夜とまったく同じ姿をしていて……

初めての国
(ありがとうの魔法―砂時計の中の唄姫 続き)

魔法使(まほうつか)い

「レティ、あの」

アルフレドがレティに話しかけようとした時、給仕(きゅうじ)の者(もの)がそれを制(せい)しました。

「アルフレド様、お食事(しょくじ)が終わるまでは、おしゃべりはおやめください。それと、レティシア姫様のことを、そのようにお呼びになるのは、どうかと思います」

「え?」

「レティシア姫様のことは、レティシア姫、もしくはレティシア様と、そうお呼びなさりますよう」

(そうなんだ。でも、レティはレティなんだけど……)

急にそんなことを言われても、アルフレドは納得(なっとく)できていませんでした。

アルフレドにとっては、レティはただの女の子で、レティシア姫なんて、まったく知らない人なのです。

アルフレドとレティは、この日もとても忙(いそが)しい日を過ごしました。

朝食を済(す)ませると、二人はすぐに馬車(ばしゃ)に乗(の)って国中をパレードしました。

一番大きな馬車には王様と王妃様そしてレティの三人が乗り、そのすぐ後(うし)ろをアルフレドの乗った馬車がついていきます。

国中の人たちが道に出てきて、口々にレティシア姫お帰りなさい、アルフレド様ありがとう、と叫んで手を振ります。アルフレドはもう何が何だかわからずに、手を振り返(かえ)すくらいしかできませんでした。

やっとお城に着いたと思っても、それからがまた大変で、昼食(ちゅうしょく)を早々(そうそう)に済ませると、今度はたくさんの人たちのご挨拶(あいさつ)が待っていました。

さすがに王様と王妃様は手慣(てな)れたもので、一人ひとりと話をしていきます。

レティもニコニコと笑いながら、「ありがとう」と返します。

アルフレドはそれを離れた場所でずっと見ていて、時々知らない人から握手を求められたりしていたのでした。そんな時間もやっと終わり、さすがにもう今日はこれで休(やす)めるだろうと、アルフレドは思ったのですが、そうはなりませんでした。

夕方になると、また宴です。

しかも今日は、昨日(きのう)よりも大きな宴が催(もよお)されました。

今夜(こんや)はあちらこちらで花火も打ち上げられて、国中が喜びにつつまれています。

アルフレドは本当に休みたかったのですが、みんなが“英雄アルフレド様”を離してはくれません。

いろんなことをたくさん尋ねられて、アルフレドの頭は爆発(ばくはつ)しそうでした。

そんな時です。

大広間の天井から突然大きな声が響(ひび)きわたったのです。

「おやおやこれは、姫が城に帰って来(き)ておる」

大広間にいた人たちが、みんな天井(てんじょう)を見上げました。