レティシア姫の記憶(きおく)

「何者!!」

王様は、大きな声で叫びました。

「わしか? わしは、東(ひがし)の山に住(す)む魔法使いじゃ」

空中(くうちゅう)に浮(う)いている老人(ろうじん)を見て、大広間にいた人たちはザワザワと騒ぎ始めます。

「その東の山の魔法使いが、なぜ我が城に入り込んでいるのだ!」

「なに、久しぶりにこの国で花火(はなび)が上がっていたので、どうしたのかと思ってな」

そう言いながら、魔法使いはレティシア姫の目の前にフワリと降(お)りてきました。

「そうしたら、姫が城に帰ってきておった」

レティは記憶(きおく)がないので、もちろんこの魔法使いのことも覚(おぼ)えていません。

「悪(わる)かったの、姫。三年前の姫の誕生の日、わしはこの国の空を飛んでおったんじゃ。その日も今日のように、たくさんの花火が上がっておった。そのうちのひとつが運(うん)悪く、飛んでいるわしに当たってな」

そんなことが三年前にあっただなんて、誰も知りませんでした。

「それで、今思い返せばわしも大人(おとな)げなかったんじゃが、怒(いか)りにまかせて姫のことをさらったんじゃ」

「なんだと!? お前が三年前に我が姫をさらったというのか!」

「まあまあ、そんなに怒(おこ)らなくてもいいじゃあないか」

「誰か! このふとどき者を今すぐ捕(と)らえよ!」

王様はもうカンカンに怒っています。しかし魔法使いはどこ吹(ふ)く風(かぜ)で、またフワリと天井まで飛び上がりました。

「だから今、こうして謝(あやま)っている。すまなかった。それに姫のことは、わしの魔法で作(つく)った大きな砂時計の中で大切(たいせつ)に預(あず)かっておったのだ。砂時計の中は時が止まったままなので、姫は三年前と何も変(か)わらず帰ってきただろう?」

そういう問題ではないと、大広間にいた人たちは思いました。

レティシア姫がいなくなったこの三年というもの、王も王妃も国中の人たちすべてが、どんな気持ちでいたのか、それをこの魔法使いはまったくわかっていませんでした。

それがまた、王様の怒りを買(か)うのでした。

 

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