俳句・短歌 歴史・地理 歌集 歴史 2021.01.13 歌集「風音」より三首 歌集 風音 【第24回】 松下 正樹 何気ない日常にある幸せを探しに。 優しい風を運ぶ短歌集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 木枯らしに尾花ほほけて立ち尽す 刈らねば寂しき庭のおもかげ 咲きみつる枇杷の白花鵯がきて 目白が来てをり持ち歌うたう 午後三時ビルのさえぎる冬至の陽 日かげの差す道帰りを急ぐ
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『オレンジ病棟』 【第17回】 朝丘 大介 「お前があの世に行ったら、愚痴をこぼす相手がいなくなる」「死ななくてほんとうによかったよ」…いいなあ、外を歩けて。 「お前があの世に行ったら、どうしようかと思ったよ。愚痴をこぼす相手がいなくなるからさあ」玄関で内田を見送ると、さっそく病室で亜鉛のサプリメントを飲んだ。一日二粒までと容器に書いてあるが、四粒飲んだ。なんとなく生えてきそうな気がした。「これのどこがそっくりさんなんだよ」夕食後、ベッドでぼやきながら、内田が買ってきたスポーツ新聞の、そっくりさんヌードの記事を見ていると、サッとカーテンが開いた。次の瞬…