・業界分析(5force分析)(図表2)[10]

業界にはどのような脅威があるかを分析し、自社のとるべきポジションを明確にするための分析です。マイケル・ポーターは5つの脅威(force)があると指摘し、5force分析と呼ばれます。

①競合の脅威・競合の数は多いか少ないか・競合間の力関係はどうか

・市場シェアは安定しているか

・競争の最大のポイントは何か

②新規参入の脅威・新規参入の企業あるいは異業種の参入はあるか

③売り手の交渉力・売り手との力関係は

・売り手の代替可能性は・売り手のニーズは

④買い手の交渉力・買い手のニーズは

・買い手との力関係は・買い手の抱える課題は何か

⑤代替品・サービスの脅威

・代替品やサービスは現れているか

・潜在的脅威はあるか

競合を分析する際は、ビールの競合として同じアルコール飲料のワインが挙がりますが、ビールをお歳暮商品の一つと考えるとハムや粉せっけんなどもビールの競合となるという点に注意してください。5force分析を病院にあてはめると(図表2)[11]、

[図表2]

同じ医療圏に存在する病院が競合の脅威に該当します。病院の数が多く、病床規模も同程度の際に脅威は大きくなります。新たに参入しようとする病院の脅威もあります。

病院の場合は地域による病床制限があり、また大きな固定費が必要ですので参入障壁は高いですが、周囲にブランド病院がない場合などは参入障壁が低いために参入しやすくなります。供給業者である製薬企業や医療機器メーカーの交渉力は脅威となります。特に業界が寡占状態にあると、企業の交渉力は大きくなります。患者や開業医などの買い手の脅威も存在します。

多くの患者を紹介してくれる開業医の交渉力は大きいですし、インターネットなどで病気の情報を豊富に持つ患者も脅威です。OTC(Over The Counter)医薬品や健康食品など医療の代替医療サービスも脅威となり得ます。ぜひ皆様も自院(自組織)に当てはめて5force分析を行ってみて下さい。

[10] Porter ME. Competitive strategy:Techniques for Analyzing Industries and Competitors.New York; Free press 1980 土岐坤.中辻萬治.服部照夫訳「競争の戦略(新訂)」ダイヤモンド社, 1995 年

[11] 小笠原克彦.医療経営学入門 日本放射線技術学会雑誌65( 1)72-78、 2009年