令和元年のフットボール

例えば夏目漱石の『吾輩は猫である』という小説では、最初に「吾輩は猫である。」という文から始まるが、それは自分(夏目漱石は親友の正岡子規と違って士族出身ではない)が犬(犬侍)と違って、猫のように飼い主に忠実ではない。ということが言いたいのである。しかし、それは、猫や犬の性格を勝手に決めつけているので差別である、ということである。

杉田はフットボールの試合を観ながら、「一人はみんなのために、みんなは一人のために」という言葉を思い出した。この言葉はデュマの小説である『三銃士』に出てきたらしいが、杉田はこの言葉が大嫌いだった。

この言葉は一見矛盾しているように見える。一人を助けるとみんなに迷惑がかかる場合、一人はみんなのために、みんなは一人のために、のどちらを優先するかわからないからである。

しかし本当の意味は一人ひとりが全体のために尽くすことで全体が得することになり、結果的に、一人ひとりが得する。ということであり、つまりファシズム(全体主義)である。

ファシズムは誰もが嫌っているはずだ。それなのに、なぜこの言葉に人気があるのだろう。