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龍馬が近江屋で思ったこと
これから坂本龍馬の話を書こうと思うのだが、僕はあまり彼のことが好きではない。
しかし、彼にはある恩があるのであまり悪口は書けない。その恩というのは僕が中学生の時のことである。
修学旅行の二日目だった。二条城二の丸御殿など、世界文化遺産に指定されているような、古い日本の建造物を班行動で自由に見学できる時間だった。
僕は緊張しやすく、トイレで誰かが後ろで待っていると早く終わらせなくては、と思いすぎて逆に出ないのである。だからみんなが一斉にトイレに入る修学旅行ではかなり尿意を催さないと小便ができない。
そして、僕はトイレを我慢するのに慣れてしまっているから、漏らす前に病気になってしまうだろう。メンタルの弱い僕は漏らすよりそっちを選ぶ。その時、班でお土産を買うことになったのだが、すでに僕は尿意を催していた。
しかし優柔不断な僕は、班の四人の中で一番お土産を選ぶのが遅かった。さすがに世界広しと言えども、小便がしたくてもお土産程度に迷う人など僕くらいだろう。
その時ほど自分の優柔不断を呪ったことはない。その後、どのお寺やお城に行ってもトイレはなかった。もうトイレに行きたくなってから三時間は我慢している。その時である。班の中に坂本龍馬が好きな女子がいて、坂本龍馬記念館に行きたいと言ったのである。
そして、その記念館にトイレがあったのである。そこで、今まで班行動では「うん」としか言っていなかった内気な僕が
「ちょっとトイレ行っていい?」
と勇気を出して言った。