俳句・短歌 歴史・地理 短歌 平安の都 2020.12.01 歌集「花と散りにし」より三首 花と散りにし 【第17回】 松下 正樹 平安末期、国を二分する戦いが起こった。それは保元の乱と呼ばれる戦乱であり、古代から中世へと、貴族政治から武家政治へと時代を切り拓いていく端緒となった。 この乱の原因である天皇家と藤原摂関家の内紛から崇徳院の配流という結末までの経緯が詠まれた創作短歌を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 神職がこのありさまに異を唱ふここに弓矢を帯びてはならぬと 腹の虫をさめかねたる郎党があやふき威嚇の矢を放ちたり あな不思議放たれし矢は空に舞ひ神殿に居し人を傷つく *久安(きゅうあん)三(一一四七)年六月十五日、事件発生。清盛三十歳。
小説 『毎度、天国飯店です』 【第6回】 竹村 和貢 サークル勧誘チラシの前で、『徒然草』を抱えた美人と出会った…。 天国飯店の定休日は毎週火曜日。アルバイト生四人で、月曜から土曜の間の五営業日を分担する。四人のうち誰か一人が二営業日に入る。その者以外の三人のうちの一人が日曜日に店に入る。日曜日は大学が休みなので、朝の十時から閉店の午後九時まで十一時間店に入ることになる。「ほな、俺、明日もバイトやさかい、おっちゃんに自分のこと話してみるわ。多分、おっちゃんも構へん言わはる思うねんけど」夏生は、「できない」とは思…
小説 『近づく果実 』 【第15回】 鈴木 寂静 デイケアで初めての交流。「趣味はない」という人が多いなか、晴美は立ち上がり… 晴美はその男性を「若白髪」と心の中で命名した。晴美に促した看護師は薄化粧がとても彼女の顔に映え、美しさを増長させていたので「薄化粧」。黒板にチョークで今日の話し合いのタイトルを書いた看護師は対照的に化粧をしていなかったが、まるで化粧をしているかのように白雪のごとくもちもちとした肌をしているので「白雪」と名付けた。窓側の北側に一人座っていた男性の医師は白衣姿ではなく、ジャケットを羽織った普通の格好…