俳句・短歌 歴史・地理 歌集 古事記 2020.10.30 歌集「古事記物語・異聞」より三首 歌集 古事記物語・異聞 【第26回】 松下 正樹 私たちの太陽(アマテラス)はどこへ行ったのだ? 日本人の原像がまざまざとよみがえる。 日本最古の史書『古事記』に登場する神々の世界を詠う、他に類を見ない叙事的な歌集。叙情的な文語と明快な口語を絶妙に組み合わせながら、神々の悲哀と愛憎をつぶさに表現する。 日本の神々は、民と交わり、民とともに働き、人間同様死にゆく存在でもある。 王国の成立と興亡の歴史が秘められた『古事記』の世界を、人々の悲しみと喜びを歌で再現。日本人の原点の物語を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 神の代の天の岩屋は渓ぞひの 青葉のかげにくらき洞見ゆ 谷川の瀬の鳴るなへにひろびろと 天の安の河原に冬日さしくる 鼓打つ神庭に舞ふ手力男の 戸取りの所作のあらあらしけれ *高千穂の夜神楽。
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『29歳、右折の週』 【第4回】 言田 みさこ 淫乱な女は14、15歳で既に男を錯乱させる光を持つと言う。15歳の理緒子に対して、7つ上の兄は「男の目」になっていた。 「せっかくの誕生日なんだから、そうね、あさみの未来でも占ってあげようかな。さて ……と。じゃーね、あさみは生涯に何人、子供を産むか」手の中からカードを一枚取り出し、中央に置いて表に返した。ダイヤの7が出た。皆、明らかにげんなりした表情に変わった。つまんないこと始めたもんだ、こんな単純な占いなんか誰が面白がるか、と。ここでも理緒子の才能を見ることになるとは誰も思わなかった。「7人?」理緒子がカード…