【前回の記事を読む】朝、夫がスーツを着てなかった。「休み取ったの」と聞くと、自分の親の予定のくせに「無理して取ったんだぞ」とケンカ腰で…

二 葛藤

美幸のページ

夫は、「おじいちゃんがどうしてもアパートに帰ると言うので、アパートに送った。ママに家にあるおじいちゃんの荷物を持っていくように伝えて」と麻衣に頼んでいた。言いづらいからといって、授業中の麻衣を使うことはないのにと思った。でも義父のことは気になったので、気を取り直し麻衣が帰ってきてから二人でアパートに行った。

義父は電気もつけず、ぼんやりしていた。お昼はいなりずしを麻衣に買ってもらったようで、それを食べたと言っていた。夕ご飯はお弁当を温めるように言われたと話をしている。

「おかずを作ってきたので、これも食べてください。本当はお義母さんが退院するまで家にいてもらってもいいと思っていたんですが、敏さんと話をする機会がなくてアパートに帰らせてしまい申し訳ありませんでした」

「そんなことはないよ。世話にならないと大口をたたいていたのに、結局、迷惑をかけたと思っている。敏も同じ気持ちだからアパートに連れてきたと思う。今まで通りお弁当を届けてくれれば助かるよ」

「お義父さん、本当にごめんなさい」

「気にすることではないよ。あいつはあれなりにあんたに気を遣っているんだ。三十年近くお互い行き来もしないで過ごしてきたんだから、舅・姑とうまくやろうと思ってくれるだけでありがたいことなんだ。ずっと二人でいたから、人の声がいつも聞こえるだけで新鮮だったよ」

「私も同じ気持ちでした。ずっと疎遠になっていたなんてうそみたいに優しくしていただき感謝しています」

義父とお別れをするわけではないのに、なぜか感極まって涙ぐんでいた。私とお義父さんとお義母さんとの距離はだいぶ縮まったと言っていい。だからこそ夫にも義父との関係を修復してほしいと心から思った。

敏のページ

いつもは僕が嫌がることは言わないし、自分の主張を押し通すことがない美幸が、今回は違っている。父親の肩を持っているようで家にいても居心地が良くない。

そのため、言葉もぶっきらぼうになっている。彼女が話しかけると「今度はなんだ」と言いそうになり、呆れたという顔をされる。けんか腰の自分の態度はいただけないが、いろいろな言い訳をして問題をすり替えてきた。