【前回の記事を読む】祖父は父と絶縁。だが祖母は、こっそり父と連絡していて…入手した私の写真を仏壇のおりんの横に置いたらしい。それを祖父も見て…

二 葛藤

麻衣のページ

「最初は反対したけど、おじいちゃんが農作業中に腰を痛めた時、偶然近くで作業をしていたその会社の人が助けてくれたの。それがきっかけで農作業の話をするようになったの。

その会社を立ち上げた人たちは、農業についての勉強はしてきたけれど、実際の農作業はあまりやったことがなくてアドバイスをもらいたがっていたの。でも、よそ者にはあまり優しくない土地柄だったから、困っていたようだったわ。

同じような境遇で農家を継いだおじいちゃんは、その気持ちがわかったのでしょうね。事情を聞いておじいちゃんが一緒に作業をするようになったことをきっかけに、地元の人との交流が始まったの。

どの家も若い人がいなくて力仕事で困っていたから、助けてほしいと思っていた人が多かったの。後で知ったことだけど、実はその会社と地域をつなげるのに、パパの高校時代の友人が一役買っていたの。

その人は、学生時代にこのままでは農業の担い手不足が深刻になると警鐘を鳴らしていた先生に心酔して、よくパパと議論をしていたみたいだった。名前はたしか大森さんという敏の高校の同級生だったはずよ」

「そうなんだ」

「大森さんは卒業後、地元の企業に就職したの。彼は自分の恩師の言葉を忘れなかったの。そして敏にも働きかけてくれていた。だから、敏自身は表に立てなかったけれど、銀行のつながりで地域支援をしている人たちと、これからの農業の行く末について話し合う機会を作っていたようだった。

難問だったし、それぞれの農家の問題だとずっと言われてきたけれど、日本全体の問題ではないかという意見が増えてきた。何とかならないかと多くの人が考えてくれるようになったの。長野だけでなく、あちこちで同じような話が出て議論されてきたみたいだった。

時間は経ったけれど、同じように考える人が増えてきて今のような仕組みが実現できるようになった。パパは先見の明があったとおじいちゃんは内心喜んでいたの」

「そのことをパパは知らないんだよね。だから今もいがみ合っているんだ」

おじいちゃんがパパのことを褒めていたことを知ってうれしかった。パパとおじいちゃんのごちゃごちゃを解決するのは本人しかできないが、おじいちゃんの本音が聞けて何とかなるのではないかと思えてきた。そのことをママにメールした。