美幸のページ
麻衣からメールをもらい、義父母の気持ちがわかりほっとした。夫が長野の支店に転勤になり単身赴任をしていた時、高校の同級生とそんな話をしていたとは全く知らなかった。
その頃は夢として実現できるものではなかったのだろうけれど、その夢が形を変えながら引き継がれていたことがうれしかった。同じようなことを考えてきた人はあちこちに沢山いて、その結果、良い方向に進んでいたんだと思った。
麻衣からのメールの後に「孝行のしたい時分に親はなし」という格言をつけて夫に送る。「なんだそれ」と返信があった。「自分で考えてみて」と返事をした。
麻衣には「ナイス」というメールをした。それから夫は義父のアパートに毎日通い、家のことを手伝っていたようだ。
「アパートに行ってみたら親父が喜んでくれた」と言いながら、照れくさそうにしている。銀行には「親の介護をしなければならないので」と説明して、今までより残業を減らしてもらった。
最初、そんなことは奥さんにお願いすべきという意見も上司からはあったようだが、幸い親の介護をしながら仕事をしている部長がいて「これからは仕事だけをしていればいいわけではないだろう。家族のことを考えていかなければ、結局優秀な人材を失うことに繋がる危険性があるだろう」と言ってくれて、職場でも了解されたようだ。
それは義母が退院しても続いていた。日中は麻衣が行き、夫が夜、夕食を一緒に食べて後片づけをしてから帰ってくるという生活になった。
学生時代に一人暮らしをしていた夫は、実は料理が上手だった。義母が教えていたようだった。これは私も忘れていたことだった。義母が味見をして、三人で食卓を囲む姿を想像するとほほえましい感じがするが、早く五人で食卓を囲みたいと期待してしまうのが本音だった。
半年後、今度は義父がお風呂場で倒れ、入院した。心筋梗塞と診断され、数日後、病状が悪化して緊急手術になった。
試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。
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