俳句・短歌 歴史・地理 歌集 日本列島 2020.10.22 歌集「秋津島逍遥」より三首 歌集 秋津島逍遥 【第35回】 松下 正樹 “忘れえぬ旅をまたひとつ三十一文字に封印す” ――日本の面白さに旅装を解く暇もない 最果ての無人駅から、南の島の潮の香りまで、まだ見ぬ土地に想いは募る。 尽きせぬ思いが豊かな旅情を誘う、味わい深き歌の数々を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 岩棚の巣に海猫は春潮の とどろき聞きてたまご孵せり 六月の三陸海岸うみ霧を 白くまとひて出づる日輪 湧水の激ち流るる水の音 龍泉洞のおくにとよもす *とよもす 鳴り響かせる。
エッセイ 『プリン騒動[人気連載ピックアップ]』 【新連載】 風間 恵子 「そんなプリンなんか作ってないで、早くメシのしたくしろ!」台所で一挙手一投足に怒り狂う義父。言葉の暴力が鉛となって心臓を突き抜けた。 ある晩のことだった。三人で、夕食のしたくをしていた。この三人と言うのは、舅(しゅうと)・姑(しゅうとめ)・嫁すなわち、私の事である。台所は女の神聖な場所と考えられているのではないか。しかし、この家では、舅が当たり前のように立つことが多い。自分が調理したものは自慢をするが、人の作った料理は決して、美味しいとは言わない。逆に貶す事に喜びを感じるタイプである。野菜の切り方から、味つけまでを一つ一つ指摘…
小説 『千恵ねえちゃん』 【最終回】 城 唯士 「ちょっと羨ましかったな」高校の部活は、別世界みたいだった。4人とも黙りがちに歩いていたが…「そうだっ。バンドやろうよ」 「そうよ、お姉ちゃんたちもちゃんと考えているからね」千恵姉ちゃんは背筋をぴんと伸ばしておせち料理の方を見ながら言った。二人にそう言われても僕はなんて答えていいかわからない。お兄ちゃんが横から肩を叩いて「ヒロ頑張れよー」とからかった。おなかがいっぱいになって箸を置いたら由美もおなかいっぱいと言って、テレビをつけた。「お義父さんと昭ちゃんはまだ飲むでしょう」おつまみを別の皿に分けて、お姉ちゃんは片付…