【前回の記事を読む】初めてうちに来たおじいちゃんが「ミニチュアみたいな家だ」と小声で呟いた。その意味に気づいてママを見ると…

二 葛藤

美幸のページ

社会科の授業で農政について学んだことを、麻衣から聞かされた。珍しく多弁だった。

「パパと一度話をしてみたい。ある意味、当事者だからいろいろ考えているかもしれないじゃない」

「そうね。率直に聞いてみたら教えてくれるでしょう」と言ってはみたが、夫にとって本当は触れられたくない話題だ。どう答えるか心配ではあった。ただ麻衣の気持ちもわかるので、その問題の部外者の私が介入することは適切ではないと思い、静観することにした。

出張から帰った夫は、気になったのか義父を診てくれた先生に会ってきたようだった。救急搬送された経緯などの説明を聞いてきたと言っていた。夕食後「帰ってくる前に病院に寄ってきた。今回はパパとママがいない間、麻衣が大活躍してくれたみたいで本当に助かったよ。ありがとう」と麻衣に頭を下げていた。

「麻衣がずいぶんおじいちゃんと話をしてくれたから検査も受けてもらえたのよ」と麻衣を持ち上げると、麻衣がうれしそうに「たまには役に立たないとね」と言っていた。

夫もそのことを先生から聞いていたようで、「おじいちゃんは頑固だけど、孫の言葉には逆らえなかったみたいだね」と言っていた。

「詳しい検査結果はまだだが、今のところたいしたことなさそうだと先生も言っていたよ」とほっとした様子だった。やっぱり仲たがいしていると言っても自分の親だから心配なのは当然だと思った。

知らん顔をしなかったその気持ちを素直に話せば、義父母との付き合い方も変わるはずなので、もう一歩踏み込んでほしかった。どう話をすればいいか迷ったが、いつもの癖でその時はそれ以上突っ込まないようにした。

数日後、麻衣が農政の話を夫にしていた。

「おじいちゃんは農家だったから、パパは当事者としてこのことでは言いたいことがあるんじゃないかと思って一度話を聞きたいんだ」

「農政の問題か。そうきたか」夫は少し考えている。

「昔はそのことを結構考えていた時期があったが、最近は遠ざかっているので今答えるのは難しいかな。ちょっと時間をくれるかな」と言いながら、触れられたくないというオーラが出まくっている。麻衣はその気持ちを察したのか「わかった。後にする」と言っている。