【前回の記事を読む】事故に遭ったのに「検査したくない」「帰りたい」とゴネる義父…困っていたら突然「検査を受ける」と言い始めた。その理由は…
二 葛藤
麻衣のページ
「おじいちゃんはパパが嫌いなの?」
恐る恐る聞くと、少し考えてから「やつがどう思っているかわからないが、おれはあいつを嫌ってはいないんだ。あいつがおれの後を継がず都会で働くのを選んだことも、しょうがないと思う気持ちがあったんだ。
でも、やっぱりそう簡単に頷けないんだよ。婿だったから余計、先祖からの土地をそのまま残すことが当たり前だと思ってきた。農家はそういうものなんだよ。そうやって何代も何代も農業を守ってきたんだ。将来性がないから継げないと簡単に言えるものではないんだよ」とうつむいてぽつりぽつりと話をしてくれた。
「高校生なのに、自治問題は苦手なんだ。だから難しくてよくわからない」
「そうだよな。今はまだわからないのは当たり前だ。いつか、麻衣ちゃんならわかる時が来るよ」と言われた時、検査の声がかかった。
検査が終わった時は疲れた顔をしていたので、その話は立ち消えになった。私にもそんな難しい話をもっと聞く余裕はなかった。
その日、おじいちゃんはアパートには帰らず私たちの家に来た。我が家でご飯を食べようと何度も誘っても、おじいちゃんは嫌がって来なかった。おばあちゃんが行きたがると、「俺が囲碁の仲間と出かける時に行けばいい。それに長野に帰ると一人だからその時は世話になったらどうだ」と言っていたようだ。おばあちゃんは、おじいちゃんが遅くなったり長野に行ったりした時は遊びに来ていた。
だから、おじいちゃんが自宅に来るのは初めてだった。「ばあさんに聞いていたが、まるでミニチュアみたいな小さくてこぎれいな家だ」と小声で言っていた。「狭いってことなんだ」と思うと、ママに聞こえなかったのは助かった。その後もおじいちゃんと話した農業のことが引っ掛かっていたが、難しくて自分では理解できないのでそのままになってしまった。
検査の結果は一週間後に出るとママが言っていた。
「心配なので、検査結果が出るまで夕食を家で食べて、そのまま泊まってもらおう」とママが言うので、うまく話してみるとおじいちゃんはうれしそうに頷いてくれた。「よかった」と思った。また自転車にぶつかったら、今度こそ大事故になりそうで怖かった。
翌日から三人で家を出て、おじいちゃんはアパートに戻り、夕方私が迎えに行くことになった。お昼はママが気を遣って私と同じお弁当を作ってくれたので、おじいちゃんはそれを持って囲碁に行ったり、図書館の庭のベンチで食べたりしているようだった。
夜、毎日のようにおじいちゃんが「お弁当のことを一緒に食べている友達に褒められた」と話をするので、ママは機嫌がいい。