小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『司法崩壊! ~刑務所が足りない!起訴できない!~』 【第18回】 利根川 尊徳 母子家庭で育ち、高校生の時から看護師専門学校までの奨学金が総額600万円。返済のため任期制海上自衛隊に志願 それから一週間後、看護師をしているという斉藤百合子に先に会う事にして、如月に電話を入れた。「あ、陽子、例の件だけど最初に優等生の看護師さんに引き合わせてくれない?」と開口一番に言うと「いいわよ。貴方の都合を先に教えて、アポ取るから……」と言われ、都合のいい日時を伝えると「分かった、それで調整してみる」と言って電話を切った。その日の夕方如月から電話があり、桜田が非番の休日にセッティングできたと伝え…