「うち、結構広いです。キッチン」
みきが遠慮しながら言った。
「え~? そうなの? なら、早く言ってよぉ~」
紗英が叫んだ。
「すみません。でも、自分の家じゃないんで。そこは一応、おじさんに了解を得ないと」
バツが悪そうにみきは言った。
みきも自分の判断で勝手に学生たちを呼んでいいか迷っていたのだという。
「でも、多分大丈夫だと思います。おじさんはずっと留守ですし、日頃わたしが管理を任されていますから」
「そうなの?」
「はい」
そのとき紗英は、みきは一体どんな豪邸に住んでいるのだろうと思った。
「それなら、キッチンの確保はみきの家ということで仮決定ね。講習会は来週の日曜日でどう?」
紗英が提案した。
「はい! 劉さんにも確認しておきます!」
真琴は元気よく言った。
それで、今回の講習会は無事にみきの家で行われることになったのだ。
みきの家のキッチンは、講習会を二回に分ける必要がないくらい広かった。劉さんに何度もお願いしては迷惑だろうと、最終的には二十五人全員で講習会をすることになった。
「ねぇ、すごいお屋敷じゃない? みきの家……」
講習会の当日、紗英はみきの家を見て驚いた。
「そうですね。わたしも中に入ったのははじめてです」
真琴も、玄関を入った途端、一面大理石だったことに驚いていた。
「真琴はみきの家がこんなに大豪邸だってこと、知っていたの?」
「はい。部活のあと、よく車で送りましたから」
道理で二人でよく連れ立って帰っていたのか、と紗英は思った。
「でも、中に入ったことはありませんでした。外から眺めているだけでは、こんなに広いキッチンがあるとは思いませんでしたし」
キッチンどころか、屋敷全体も奥行きがあって、表から見るよりずっと広いようだった。部屋数も相当あるらしい。みきはここに一人で住んでいると言った。
「庭も広いしさぁ。花なんかもほら、きれいに手入れしてあって、まさに花園っていう感じよね?」
「そうですねぇ」
庭の花々を見て、真琴もうなずいた。
「ここ、おじさんの家だって言っていたよね?」
紗英が小声で真琴に聞いた。
「はい、そうみたいです」
「おじさんは何をしている人なの?」
このお屋敷を見ると、みんな同じ質問をする。
「船に乗っているらしいです」
「ああ……」
そして、同じ反応をするのだ。
船に乗っているおじさん。
世界を股にかけて、貿易商をしているのだろうかと紗英は思った。
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