【前回の記事を読む】女子高生だった私は、男子校の学園祭で好きな飲み物を頼んだだけ…なのに男子たちの間で噂に。後日つけられていたあだ名は………

丙午と野良猫記

秋にも男子校の学園祭が行われた。秋は紅葉が深まり、校舎はちょっと寂しげな雰囲気を醸し出す学園祭にはもってこいの季節だった。

当時爆発的人気だった『少女A』が大音量で繰り返し流れていた。私達も大好きだったので、みんなノリノリで歌っていた。この頃はナンパが流行っていたので、男子高生が気軽に女子高生に

「ねぇ、ねぇ、お茶飲んでく?」

と声をかけ、女子高生も嫌でなければ立ち止まって話し相手になった。

学園祭のフィナーレは、夕方五時からのキャンプファイヤーだ。男子も女子も校庭に集合して、うす暗くなる中音楽に合わせてダンスをしたり、談笑したり、ナンパして声をかけたり……。

男子が積極的に女子に声をかけて、話に花が咲けば帰り際に自分の電話番号と名前を書いたメモを渡す。女子も気に入ったら名前と電話番号を渡して、その時はサヨナラをする。

すると、翌日以降に家電(いえでん)にあの時の男子高生から電話がかかってくるのである。我々の高校時代はあの“黒電話”が一家に一台の時代であった。

我が家は玄関から入ってすぐの和室に置いてあった。しかし、その場所は父親の寝室でもあったので、男子高生と電話でおしゃべりなどもってのほかであった。

ジリリーーーン、ジリリーーーン。

「もしもし(低い父親の声)」

『もしもし、△△ですけど、○○○さんいらっしゃいますか?(冷や汗)』

「誰だ?」

『△△ですけど』

「ちょっと待って」

「(私を呼んで)△△から電話」

「えっ? △△?」(やばっ!? あの男子高生かも……)

「もしもし? ○○○ですけど……」

『あっ!? △△です。先日、学園祭の』

「ああ……。どうも、はい、はい、はい……」

……次の待ち合わせの日時の場所だけを聞いて受話器を置いた。

「誰だ?」

と父親に聞かれるが、私は

「えっ? なんか会いたいらしい」

とだけ答えてそそくさと自分の部屋へ入る。父親は番犬みたいなものであった。

こんな状態だから夜の七時半から八時頃に電話がかかってくるとドキドキした。相手の男子高生には「父親の部屋に電話が置いてある」なんて恥ずかしくて言えないし、長話も出来ないしで上手くいく訳がなかった。相手も電話をかけるのは相当緊張したであろう。

だって、誰が電話に出るのかわからないのだから。まぁ世の男性が、非常にハードルの高い“父親”という存在を感じながら、勇気を出して好きな女性にコンタクトを取っていた時代だった。