本当にこの道で正しかったのか、何か違う方法があったのではないか、考えてもキリはなかった。

でも千春はもういない。そしてここにはもう、葵がいるんだ。

後悔したままでも、前に進むしかなかった。

葵のために。

千春がのこしてくれた、この小さな命のために。俺たち二人の子のために。

渉はガラスから額を離して、もう一度葵を見た。

外では、冬の夜が静かに続いていた。

 

葵を連れて家に帰ったのは、千春が死んでから10日後のことだった。

タクシーの中で、渉はずっと葵を見ていた。眠っていた。小さな鼻が、かすかに動いていた。

アパートのドアを開けた瞬間、千春のいない部屋が渉を迎えた。台所のフックに、千春のエプロンがかかったままだった。本棚に、千春の本が並んでいた。窓際に、千春が育てていた観葉植物があった。

渉は玄関に立ったまま、しばらく動けなかった。

腕の中の葵が、小さな声を上げた。渉はその声に引き戻されるように、部屋に入った。立ち止まっている暇はなかった。

*

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