【前回の記事を読む】その時、機械の音が変わった。医師と看護師が一斉に動きだし、手術室の外に出され…どのくらい経ったか、医師が出てきて「最善を尽くしましたが…奥様は…」

5.

葬儀は、3日後に行われた。

千春の両親が来た。千春の母は顔を覆って泣いていた。千春の父は口をぎゅっと結んだまま、ずっとうつむいていた。

渉は2人に挨拶をした。頭を下げた。

「申し訳ありませんでした」

声が途切れた。それ以上、言葉が出てこなかった。

千春の母が「渉さん」と言いながら、渉の手を取った。「あなたのせいじゃない」と言ってくれた。その言葉で、渉の目からまた涙がこぼれた。

棺の前に立ったとき、渉は千春の顔を見た。

穏やかだった。眠っているようだった。

(千春)

それは声に出してしまっていた。

「千春」

もう一度呼んだ。涙が顎を伝って、落ちた。

「……ごめん」

渉は自分がなぜ謝っているのか、分からなかった。なぜ千春が死んで、自分が生きているのか、分からなかった。

「ごめん、千春」