その時、機械の音が変わった。医師と看護師が一斉に動きだし、手術室の外に出され…どのくらい経ったか、医師が出てきて「最善を尽くしましたが…奥様は…」
父の不倫の果てに、病んだ母を亡くした中村渉。父はやがて再婚するが、16歳のときその父も逝った。継母のもとにひとり残された渉に与えられたのは、窓のない三畳の納戸だけだった。18歳で逃げるように家を出た彼がたどり着いたのは、女性用風俗店のセラピストという仕事で…※本記事は、雪川 かおり氏の書き下ろし小説『わたる』より、一部抜粋・編集したものです。