【前回の記事を読む】帰ると机に妊娠検査薬が…「できたみたい」と言う妻。動けなくなった。「嬉しい」とは伝えたが、病気のことが気がかりで…

4.

妊娠中、千春の体調は波があった。

妊娠がわかると、千春はすぐに仕事を辞めた。担当医から「妊娠中はとにかく安静に」と言われていたし、千春自身も体への負担を考えて、早々に武蔵のバイトを辞める決断をした。武田さんは「いつでも戻っておいで」と言ってくれた。千春は「ありがとうございます」と頭を下げながら、少し泣いていた。

渉は家事を全部引き受けた。千春には横になっていてもらった。

「渉、やりすぎだよ」

「いいから、横になってて」

「でも——」

「いいから」

千春は苦笑しながら、素直に横になった。

妊娠が進むにつれて血液量が増え、肺の血管への負担も増していった。担当医からは「妊娠初期と、出産前後は特に注意が必要です」と言われていた。

産婦人科と循環器内科が連携して、慎重に経過を見ていた。月に一度だった検診が、妊娠中期からは2週間に一度になった。渉は毎回、仕事を調整して一緒に行った。

「また一緒に来てくれた」と千春はいつも言った。

「当たり前だよ」と渉は答えた。

妊娠5か月頃から、動悸が起きやすくなった。少し動いただけで息が上がることもあった。担当医から「とにかく無理は禁物です」と改めて念を押された。

渉はその言葉を、千春にも繰り返した。

「無理しないで」

「してないよ」

「ちょっとでもしんどかったら、すぐ言って」

「わかってる」

千春はそう言うたびに笑った。

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