【前回の記事を読む】「異母兄妹かもしれないです」…被害者の恋人は、昨日突然別れを告げていた。「結婚を考えていた」と怒った彼に、本当の理由を言えないままで…
ダウト2――シェイクスピアを疑え
「林佳奈さん、28歳。黒田烈斗さんのマネジャーですね。最近烈斗さんの様子に変わったところはありませんでしたか? 理亜さんとの熱愛報道も出ていましたが」
尾崎が聴取を開始した。
「はい。多少気にはしていたようですが、理亜さんとの交際をやめるつもりは全くないようでした。結婚まで考えていたようでしたから」
「昨日、理亜さんが烈斗さんに別れ話をしたことはご存知でしたか?」
「えっ、そうなんですか? いえ、烈斗は私には全然そんなことは言っていませんでした」
「烈斗さんはあなたから見てどんな性格でしたか?」
「烈斗はとにかく明るかったです。あまり細かいことは気にしないというか。あといたずら好きで本当に困っていました。TVのロケ番組の時とかも、急にどこかに隠れていなくなってしまうんです。
私達が心配して捜すと急に後ろから飛び出してきて驚かしたりとかして。今でも本当は死んでいなくて、ただ私達を驚かすために隠れているだけなんじゃないかって思ってしまうんです」
林は眼鏡の下の涙を拭った。
「君は烈斗君のマネジャーをして何年になるかね?」
天蓋が訊いた。
「6年になります。大学を出てすぐこの仕事に就きましたから。最初から烈斗の担当でした」
「6年もマネジャーをしている人間が何故わざわざ客席を取ってこの舞台を観劇していたのかね」
「ああ、気づかれていたんですね。私は烈斗のマネジャーであると同時に子役の頃から彼のファンでもあったんです。だけど楽屋にいたのでは彼の演技を観ることができないので、いつも公演のうち1日だけは客席から観劇することにしていたんです。今日はたまたまその日だったんです。でもそれが最後の舞台になるだなんて……」
林はうつむいて涙を流した。しばらくの間沈黙が部屋を支配した。
「分かりました。どうぞお帰りください。犯人は我々がきっと逮捕しますから」
尾崎は彼女を慰め、退室させた。