その直後、彼の携帯が鳴った。

「はい、尾崎だ。そうか、分かった」

「どうしました?」

伊藤が訊いた。

「鑑識からだ。天蓋さんが見込んだ通り、黒田烈斗の死体から青酸カリが検出された。吐血した血液からもだ。

だが舞台で使用された杯や舞台袖のペットボトルの水からは一切毒物は検出されなかったとのことだ。

それと、この劇場をごみ箱に至るまで全て捜索し、関係者の所持品も全て確認したが青酸カリは見つからなかった。トイレに行くのも監視をつけたから便器に流したとも考えられない」

「じゃあ、烈斗はいつ青酸カリを飲んだんでしょうか。まさか開演前?」

高井良が首を捻った。

「『ハムレット』は2、3時間はかかる長丁場の演劇だ。一方、青酸カリは摂取後数分で中毒症状が出現する。開演前の摂取はありえない」

天蓋が言った。

「じゃあ、烈斗は密かに隠し持っていた青酸カリを舞台上で飲んだ……じゃあ、やっぱり自殺じゃないですか」