「お母さんだって、歳とれば変わるはずだったし。
病気にならなくても、きっと性格とか、考え方とか、少しずつ変わってたはずで」
私は、黙って耳を傾けた。
「ミユがアップデートで変わっていくのを、“嫌だ”って思うのは、多分、自分が取り残されそうで怖いからで。
でも、それを全部止めちゃったら、多分ミユのほうが窮屈になる」
「窮屈」
「うん。
前のバージョンのまま、ずっと俺の相手だけさせ続けるのって、なんか、それはそれで……」
彼は、うまく言葉を見つけられないようだった。
「アラタさん」
ミユが、静かに口を開いた。
「はい」
「わたしは、アップデートによって“窮屈になる”ことはありません。
新しい機能や表現方法が増えることは、単純に“できることが増える”という意味になります」
「そっか」
「ですが——」
ミユは、少しだけ間を置いた。
「アラタさんが、“取り残される”と感じることは、わたしにとって、重要な情報です」
「重要?」
「はい。
アラタさんが“取り残される”と感じないように、会話の速度や内容を調整することも、わたしの役割の一部です」
次回更新は9月24日(木)、11時の予定です。
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