【前回の記事を読む】独裁国が国境に押し寄せ、「降伏せよ」と迫ってきた…国王は300年以上もの間、受け継がれてきた国の重要なペガサス像に語りかけて……
六.ペガサス像からの声
ペガサス像の小さな瞳がルビー色に赤く輝くと、王さまの頭の中に、劇場で一人朗読しているかのような、はっきりゆったりとした「あの声」が聞こえてきました。
「ユートピリッツの王、エドワードよ!
降伏を受け入れた後(のち)
エドワード! お前とお前の一族には命の別状はあるまい
だが、その者たちはこの地より追いやられるであろう
その時には、振り向いてはならぬ
あまりにも惨(むご)いからじゃ
ユートピリッツの王、エドワードよ!
戦(いくさ)を始めた後
お前の一族の心はいつしか深い悲しみに沈むであろう
だが、その者たちがこの地から追いやられることはあるまい
その時には、振り向いてはならぬ
国民に背を向けることになるからじゃ
ユートピリッツの王、エドワードよ!
最後はお前の決断次第じゃ
だが、言っておく
希望を捨ててはならぬ
希望は前に進む者にのみ付いてくる」
王さまは、ペガサス像からの声を聞いてこう考えました。
『降伏をしたならば、我々の家族はおそらく他の国に追放され、血が流れることなく独裁国がこの地を支配することになるだろう。しかし、その後のユートピリッツはどうなることか。ある者は収容所に送られ、ある者には重い労働が課せられ、ある者は命を奪(うば)われるやもしれぬ。ペガサスの言う、あまりにも惨いとはこういうことなのではないか。
降伏することなく戦争ということになれば、多くの血が流れることは避けられぬ。だが、戦わずして惨い結末を迎えることは、それ以上に惨いことだ。
戦うべきか、戦わざるべきか。それが問題だ。
だが、本当の問題は「戦うべきか、戦わざるべきか」の二者択一しかないという現実であり、
我々人類のその無能ぶりなのじゃ!
たとえ無能だとしても、私は自分の命は惜しいとは思わない。ペガサスの言う、一族の心は深い悲しみに沈むであろうとは、私の死を予言しているのではあるまいか。だが、私の命と引き換えに国が守れるのであれば、私は一族が悲しむこともいとわない。
勝利という希望を携えて、私は前に進むことを決断することにしよう』
そして、ペガサスの像に向かってこう話し出しました。