【前回の記事を読む】大切にしまっていた、故人からの手紙を持ってくるよう命じた。手紙は書斎の奥に大切に保管されているが、そこまでの道のりは長く…
五.ペガサス伝説
机の奥の秘密の戸棚から、王さまが大切そうに取り出したのは、馬の胴体に翼の生えた「ペガサス」の像でした。このペガサス像の胴体は、宮殿のパティオに飛んでくるハトと同じくらいの大きさで、どうやら木を削って作られたもののようです。
水平に広げた翼は胴体に組み込まれていて、翼の下にある二つの木片の“クサビ”でしっかりと固定されていました。
尾は垂直に天に伸び、尾の付け根に差し込まれた一つのクサビで胴体にしっかりと固定されていました。
クサビは、左右の翼の付け根にそれぞれ二つずつ、そして尾の付け根に一つ。ペガサス像には、合計五つのクサビが使われています。
それらのクサビの大きさは、像の大きさから推測すると、おそらくみな一インチ(約二センチ半)ぐらいのものでしょう。
王さまは、このペガサス像を両手で包み込んだまま、王冠の脇にそっと置きました。素朴な作りの像ですが、クサビで固定された翼と尾のおかげで、そのペガサス像は今にも大空に飛び立ちそうです。
王さまはその姿を見ながら、このペガサス像の由来(ゆらい)とペガサス像との関わりを思い起こしていました。
それは、ユートピリッツ王国にまつわる「ペガサス伝説」と言ってよいでしょう。
ユートピリッツ王国建国の歴史は、このような「詩(うた)」で広く語り継がれています。
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遙(はる)か遙かの その昔
多くの人に 慕(した)われた
一人の騎士が 作りたる
この地に国を 作りたる
ある時王は 考えた
王宮を どこに築けば よいものか
どこかよき地は ないものか
迷いて空を 見上げれば
白き「ペガサス」 舞い降りて
後(あと)に続けと 誘(いざな)えり
王をその地に 誘えり
これが広く国民の間にも語り継がれている詩です。
それは、まさに王国が創(つく)られた当時のことを歌い上げているのです。
『遠い昔、多くの人々から慕われていた一人の騎士が、この地にユートピリッツ王国という小さな国を創り初代の国王となりました。
国王が、どの場所に王宮を築いたらよいかと迷っていたところ、空から白い「ペガサス」が舞い降りてきました。
国王の前にかしずいたペガサスは、「私の後についてくるように」と国王に言いました。国王は、飛び立ったペガサスの後を馬に乗って追いかけました。だいぶ長い時間走り続けると、今の王宮の中にある宮殿のパティオ(中庭)の辺りにペガサスは舞い降りたのです』
ここまでは語り継がれているとおりですが、この先の出来事は代々の国王しか知る者はおりません。