【前回の記事を読む】歴代の国王しか知らない秘密の伝承——「なにかあれば“分身”を頼れ。ただし、その後4年間は……。」
六.ペガサス像からの声
初代の国王が目にした物は、馬の胴体に翼の生えた「ペガサス」の像でした。
このペガサス像は、木を削って作られています。水平に広げた翼も胴体と同じ木で作られていて、付け根を二つのクサビでしっかりと固定されています。
垂直に天に伸びている尾も胴体と同じ木で作られていて、一つのクサビで胴体にしっかりと固定されています。素朴な作りですが、その姿には力強さを感じることができます。
まさに、このペガサス像こそユートピリッツの国王に代々引き継がれ、エドワードが机の裏側の秘密の戸棚から取り出した、あのペガサス像なのです。
国王は、ペガサス像を両手で包み、そっと持ち上げました。
その感触は、温もりがあり、高揚した気持ちを落ち着かせてくれるものでした。ペガサス像を持ち上げたその下には、ひときわ大きい一粒の宝石「ルビー」が、国王に語りかけた時のペガサスの瞳と同じように赤くまばゆい光を放っていました。
これらペガサスが残したものを見て、王さまは『このペガサス像こそが、私をこの地に誘(いざな)ってくれたペガサスの“分身”なのだ!』と確信するのでした。
やがて、初代国王は、この地に宮殿と広大な庭園のある王宮を築きました。宮殿の大広間には玉座を置き、その前に置く大きな机もこしらえ、その裏側にペガサス像を安置(あんち)するための機械仕掛けの秘密の戸棚も作りました。ユートピリッツの紋章には、ペガサスを使うことにしました。
ユートピリッツの地にもきれいな宝石はありましたが、ペガサスの残したルビーで立派な王冠を作ることにしました。
この地で採れる金は少なかったので、王冠に使う金は西の国から譲り受けて作りました。これこそが、エドワード国王がいつもかぶっている、あのひときわ大きい一粒の赤い宝石が飾られた王冠なのです。
初代の国王は、ペガサス像と王冠とを大切に扱い、これらをペガサス伝説とともに次の国王に伝えました。
こうして、その次の国王にも、その次の国王にも、その次の国王にもペガサス像と王冠、そしてペガサス伝説は代々伝えられました。
そして、三百年の後も、これらはエドワード国王へと引き継がれているのです。