── お腹が減った。早くごはんにしてくれないかな。
でもさっきから人間たちは、息をひそめて硝子戸の向こうばかり見ている。一体何が起こってるんだろう。
知らない人がいっぱいだ。それに電気もあんなにこうこうと照らしちゃって、まぶしいったらありゃしない。面白いことでもやってるのかな。僕も見てみたーい。だけど、短足の僕には見えないよう ──
醸はくいと引き戸を鼻で押し開け、とととっと照明の中へ出ていった。
「カーット! 犬が通りました」
カメラマンの大きな声。撮影中断。
「すみません、すみません」と私は醸を追いかけて、照明の輪の中からさっと横抱きに犬を回収した。
俳優たちはふっと緊張をといて、笑ってくれた。
本当は、集中して演技しているさなか、大迷惑だったに違いない。
次回更新は8月19日(水)、19時の予定です。
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