【前回の記事を読む】明治から続く実家の酒屋を、テレビが「撮影したい」と…だが内容は殺人事件のドラマだった。しかも本当の目的は、酒屋の撮影ではなく…
第二走者 醸 (ミニチュア・ダックスフント) 平成九年~平成二十二年
人間もどき
撮影の日、撮影隊はものすごい人数でやってきた。
まず先乗りしてきた衣装係は、三、四人いたかと思う。衣裳部屋代わりに一部屋提供できないかというので、日頃使っていない奥座敷を提供した。
そこでは衣装係が縫物をしたり、ちょっとした洗濯物まで干していた。 酒屋というので法被(はっぴ)を貸してくれという。こちらとしては、会社名が大きく書かれた法被を貸せば、そのまま映るものと大いに期待して、何枚も貸してやった。
結果的には、衣装係が法被の社名の入った部分に、番組で使われる別の会社名の入った布切れを縫い付けて使用された。
大道具係は、会社名が表示された門柱や板壁にすべて別の名前を書いた覆いをするか、別名の大きな看板を作って前に置いた。
音声係や照明係、レフ板を持つ係、タイムキーパー、記録係、機材セットする係、小道具を用意する係、美術にメイク係、道具を運ぶだけの人、洗濯をする人、掃除をする人。
そしてやたら飛び回る助監督と、撮影画面をのぞき込んでいる監督。
あとは何の仕事をしているのかわからない輩が一ダース。中には時間待ちの人のために、コーヒーを淹れる係もいた。
ようやく役者たちがやってきたかと思うと、一般的にロケバスと呼ばれる大きなバスの中に控えている。
観光客受け入れ用に、大型バスを六台ほどとめられる駐車場があったからよいものの …… いや、あったから撮影場所に選んだのかもしれない。とにかく、総勢五十人近くの人間と、それに伴う車両が大挙してやってきた。 撮影には三日ほどかかり、あちこちのロケと組み合わせて我が家の古い家を使用した。