最終日の犯人逮捕の場面では、地元の県警がパトカーまで出して協力をする。
そのために、会社の前の道は夕刻から通行止めにされ、何だ何だと近所の人が大挙して見物に詰めかけた。
主役がK・E。当時かなり人気もあり、いわゆる二枚目ではないが、毒のない庶民派の万人受けする俳優。
そしてその弟が初共演するとも聞いていた。女優たちもそうそうたるメンバー。
十月中旬とはいえ、陽が落ちると冷え冷えとした空気に包まれる。
撮影が始まった。監督のオッケーが出るまで、何度でも撮り直す。
古い家なので、白熱球で照らす照明は電気を食うらしく、夕刻過ぎるとブレイカーが落ちることもあった。母と私は夕食の支度をしようと思うのだが、まだ撮影が続いている。
それも台所の隣の隣、囲炉裏のある吹き抜けの間に、俳優たちが並んでいる。とり囲む音声マイク係、照明係、レフ板係。
どうやらドラマの大詰め、犯人を特定して追い込むシーンらしく、緊迫した空気が流れていた。
打ち合わせをした助監督を見つけて、台所で食事の支度をしてもよいかと尋ねると、音は出すな、照明もつけるな、と言われた。
仕方がないので、私と母は暗がりの硝子戸越しに、撮影を見物することにした。
空気が冷え込んできて寒いのだろう。正座をしている主役の足の裏には、カイロが貼られているのが見える。
俳優が五人車座になって、神妙な顔つきをしている。主役の青年探偵が、殺人事件の推理をみんなに披露する場面。とり囲む俳優らが、青年探偵に注目する。
青年探偵は鼻にかかった声で、おもむろに切り出した。
「犯人は、こう考えたんじゃないでしょうか …… 」
そのとき、醸(ジョウ)はこう考えた。