【前回の記事を読む】看護師の求人で見つけた異常すぎる条件…「身長は160センチ前後、体型は標準、場所はホテルで3日間拘束可能なこと」…しかし、すぐに応募が集まった。
第1話 尊厳死協会会員 渡瀬訓太郎物語
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佳代が待っていると、ノックのあと、ダークグレイのパンツスーツを纏った女性がドアをそっと開け、中を覗くようにして入って来た。「初めまして、看護師の板橋さつきと申します。よろしくお願いします」
「応募してくださり、ありがとうございます。渡瀬佳代と申します。どうぞお掛けください」
さつきも佳代も落ち着いた雰囲気で対面した。
「募集条件を読んでくださいましたか? 思いつくままいろいろ書きましたが、条件で気になることはありましたか」
「とても興味深く読ませていただきました。どんな人を看病するのかしらと想像しているうちに、お手伝いしたいと思うようになり、応募させていただきました。気になったのは、容姿が駄目かもしれないと……」
さつきがフフッといたずらっぽい笑みを浮かべると、佳代も微笑みを返した。
「そうよね。容姿を条件にするなんてハラスメントよね。スイスにいる娘に少しでも似ていればいいかなと思って書いたのよ。とても似ていらっしゃるわ。驚くほどよ。まず容姿は合格だわ。ちょっと質問をしてもいいかしら?」
「もちろんです」
「ご家族は?」
「独身です。両親とも、もう亡くなりました」
「結婚なさらなかったの?」
「直前まで行ったことが一度だけあったのですが、駄目になって……それ以来、看護師一筋です」
さつきは、「失うものは何もない。束縛する人は誰もいない」というメッセージを出していた。
「看護師のお仕事もいろいろあるでしょうけど、得意な分野とか苦手なこととか、興味を持っていることなどありましたら教えてください」
「私は卒業してすぐの5年間は救命センターに配属されました。一生懸命勉強して何とか後輩の教育係もできるようになりました。それから、化学療法主体の血液内科に配属になり、副作用の強い治療や、死を受け止める心への対応について、興味を持ち本も読みました。今、関心があるのは海外青年協力隊です。それから、苦手なことは恋愛です」
佳代は、「あら、もったいないわね」と言いながら笑った。
さつきは用意していた答えを口にするのではなく、臨機応変に言葉を選んで話しているように見えた。看護師としての経験も豊富そうだし、自信もありそうだ。また、海外で働きたいというくらいだから、献身的な人なのだろう。佳代は事情を話せば必ず賛同してくれると確信した。
「面接は大合格よ。2泊3日完全に拘束されることを了解していただけるなら、具体的な仕事の内容をご説明させていただこうと思いますが、その前にさつきさん、さつきさんからご覧になって私は合格ですか? 一緒に働いてもらえますか?」