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序論
第一節 日本古代史への動機とシャカムニの思想および母系制と父系制についての序論
親族用語は親族制度を反映しないとして、モルガン、エンゲルスらの理論を批判する学者の代表に、A・L・クローバーがいる。
クローバーは、アメリカ合衆国の文化人類学界で、長く指導的立場にいた学者である。
彼は、「親族関係の類別的体系」(『文化人類学入門リーディングス』〔アカデミア出版会〕所収。原題 "Classification Systems of Relationship" 栗本英世訳)と題する論文の中で、
「ある関係の名称から社会制度や婚姻上の制度の現状を導き出そうとする一般的な方法ほど根拠の弱いものはない。……確実な証拠がないのにこれらの表現が社会的状態の直接の反映あるいは結果であると結論するのは危険である」といって、次のような例を挙げる。
リッグスによれば、ダコタ語では祖父と義理の父に対して一つの語しかない。
ときに用いられる推論の形態にしたがえば、このことからこれら二つの関係がかつては同一視されていたことが導き出される。
この意味するところを拡大すれば、スー族では母との婚姻がかつて慣習であったというばかげた結論が得られるのである。
この例においてクローバーが念頭においている図式は、下図のようなものだろう。
この図で、○と●は女性を示し、□と■は男性を示す。
また凹型の線は婚姻関係を示し、凹型を上下逆向きにした線は兄弟姉妹関係を示し、これら両者を結ぶ縦線は親子関係を示す。
この図で、クローバーのいうところを確認してみよう。
図中に示した如く、まず、■を本人としよう。本人の祖父は、図中の祖父□である。
本人の義理の父とは、本人の妻の父であるから、図中の義父□である。
さて、スー族用いるダコタ語では、本人の義父と祖父が同じ語であることから、クローバーは、スー族では本人とその母との婚姻がかつて習慣であったというばかげた状態を示すことになる、というが、図で祖父□と義父□とを重ねてみれば分かる如く、正確には、本人と、本人の父方の叔母(図中の●)との婚姻が習慣であったことを示す、というべきである。
あえて図示してみれば次頁の上図のような婚姻関係となる。