父が他界してから二週間後の休日、母の家に向かった。一人での生活にまだ慣れていないと思い、食材や惣菜、飲料水を三、四日分買い込んでいった。

玄関のチャイムを鳴らすと目を腫らした母がドアを開けた。

「あ、来てくれたんだ」

母は少し嬉しそうに言った。妻も優しく呼応する。

「昨日電話で行くって言ったじゃん。また泣いてたの?」

「うん、お父さんのことを思い出すと悲しくて」

「……そうだね。食べもの買ってきたよ」

妻は、既に腫らした目尻にまた涙が浮かぶ母の気を紛らわそうと、スーパーの袋の中を見せる。

「あ、こんなにも? ありがとう」

「ごはんはちゃんと自分で買って食べてる?」

「うん……でもあんまり食欲なくて」

「悲しくてもしっかり食べないと体を壊しちゃうよ」

「うん」

悲嘆に暮れる母と共にリビングに移動しながら、母をどうにか元気づけたい妻は思案する。

「今日は、気分転換に外にご飯を食べに行こう」

「あ、外に? わかった」

少し驚いた様子とともに、母の顔がやや明るくなった。リビングで何を食べようかとあれこれ話しているうちに、少しずつ口数も増えてきた。

外食先が決まったところで妻が役所の手続きの話を切り出す。

「ところでさ、お母さんに平日役所に行って住民票とか取ってきて欲しいんだけど。私たち、平日は仕事で忙しいからさ」

「え? 私やり方わかんないから無理よ」

困惑する母に私たちは少し戸惑った。すんなり引き受けてくれると思っていたからだ。

「今まで住民票とか取ったことない? そんなことないと思うけど。まぁやり方わかんなくても役所の入り口付近に案内してくれる人がいるから、聞いたら教えてくれるよ。必要書類リストを書いておくから」

妻はささっと必要書類を書き出し母に手渡すが、母は抵抗感を示す。

「そんなこと言われても……、あんたたちには簡単かもしれないけど私には難しいわよ」

「大丈夫大丈夫。家に籠っててもお父さんのこと思い出しちゃうから、外に出て少しずつ気分を変えたほうがいいよ」

「……」

 

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「あんたたちと一緒にしないで!」…1人暮らしの母に役所手続きを頼むと口調が豹変…生前の父は「俺が死んだら施設に入れろ」と言っていて…

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