【前回の記事を読む】肉食を好んだクロマニヨン人に、草食に適応したネアンデルタール人の遺伝子が混じった結果…現代人の中に残された“矛盾”とは……

第一章 自己の真実性

第二節 自己の本質

第三項 人間の愚悪性

(一)愚者と賢者

高い学歴。

教養があり、博識。

理知的で、思考が科学的。

論理的で、適切な判断ができる。

そう自負する人たちは自分が愚者だとは言わない。そのような人に向かって、あなたは愚者であるなどと言えば、たいへんなことになるかもしれない。

ブッダはそれも愚者だと言い切る。

本当の賢者とは、自らをおろかであると思えた人のことを言う。

仏教では、この世は相対有限であり、賢者も愚者も浅はかであって、みな急がなくてもよいことを争いあっている。激しい悪と苦の中であくせくと働き、それによってやっと生計を立てているに過ぎない無明穢土(むみょうえど)の世界であると説いている。

(二)おろかさの自覚

人間は自分のおろかさを自覚することはなかなかできない。

そして、おろかに生きることは甚だ難しい。

むしろ、おろかさを隠して生きているのではないだろうか。