【前回記事を読む】「早く病気が治りますように」七夕の短冊に書かれた願いに胸を突かれ……外科医志望の私が選んだ道は――
医学生時代 1979年4月〜1985年3月
小児神経5 学生時代に将来の青写真を描く
ある日、友人やサークルの仲間に自分の進路について話した。
友人たちは私の思いを知り、共感し励ましてくれた。しかし私は、周囲の理解と裏腹に、不安を募らせていた。
学生時代の思いを大人社会で実践し続けることができるのか。
若き日に理想を語った人たちが、社会に出てから違う方向に転向するのをたくさん見た。
自分も組織の一員として働くようになり、いつしか学生時代のことは思い出にすり替えてしまうのではないか。今の自分を守り続けるすべはないだろうか。
悩み続ける日々の中、太平療育園に通い始めた頃を思い出した。障害児施設には独特のにおいがあった。よだれのにおいだ。
そうだ、ならばあのにおいが染み込んでいるか、自分自身を嗅いでみれば良い。
あのにおいがする限り、自分は学生時代の青写真を抱き続けていることになるのではないかと思った。
――秋田魁新報 2012年11月6日掲載