小児神経7 鬼手仏心の精神を知る

医師になって2か月後、横手市の平鹿総合病院で働くことになった。

小児科の科長と研修医の自分と2人だけで、待合室にあふれる外来患者に対応した。

この年、無菌性髄膜炎が大流行した。髄膜炎は細菌による化膿性髄膜炎とウイルスによる無菌性髄膜炎とに分けられる。

化膿性の場合は、有効な抗生剤を一刻も早く投与しなければ、重篤な状態に陥る。

一方、無菌性の場合は、1週間ほど安静にすれば良くなることが多い。この2つを確実に診断するために髄液検査を行う。

髄液を採取するために、高熱と頭痛で苦しんでいる子どもを横向きにし、背中から針を垂直に5センチほど差し込む。

意識状態を見ながら髄液を採るので、麻酔は使わない。針先が髄腔(ずいくう)(注1)にうまく入れば針の出口から髄液が垂れ落ちる。

動くと脊髄を傷つけてしまうので、時には暴れないように3人で押さえつけることもあった。

針を刺される痛みより、窮屈な姿勢で押さえつけられる恐怖心から、子どもはありったけの力で泣き叫ぶ。できれば避けたい検査だ。

首が硬くなるという髄膜炎に特徴的な所見があれば、迷わず髄液検査を行う。しかし、首の硬さがはっきりしない時も多く、髄液検査を躊躇したこともあった。


(注1)髄腔:脊髄周囲の隙間を髄腔と呼び、髄液が循環している。

 

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