はじめに
学生時代、ボランティア活動を通じ障害児と交流するようになったことが全ての始まりでした。
私は医学部を卒業する時、この子どもたちと生涯関わり続けようと思い、小児神経科医の道を目指しました。以来、一貫して秋田県を中心に障害を持った子どもたちと関わってきました。
多くの子どもたちと出会い、そして別れる中で、いつしか、子どもたち一人一人のことを忘れないように、その姿や家族の思いを文章にして残したいと思うようになりました。
そんな折、秋田県の地方紙である秋田魁新報(さきがけしんぽう)から、連載しているコラムを分担して書いて欲しいという依頼が舞い込んできました。
毎週土曜日に医師が記載する「聴診記」というコラムです。専門分野の異なる医師6〜7名が、自由なテーマで1000字ほどのエッセイを順番に執筆していました。
内容に関して特別な指定はありませんでしたが、ほとんどの医師は、それぞれが専門とする疾患や医療制度について、分かりやすい解説を記載していました。
そんな中、私は、前例を参考にせず、これまで出会った子どもたちのエピソードを中心にエッセイを書くことにしました。
初回掲載の2010年12月28日から、最終掲載の2022年9月3日まで、11年9か月にわたり、80編のエッセイを執筆しました。
初めの10回は「てんかん」について、その後の70回は「小児神経」について書きました。本誌では、読者が理解しやすいように、新聞に掲載された順序とは逆になりますが、初めに「小児神経」の70編を、その後に「てんかん」の10篇を配置しました。
また、字数制限で簡略化した箇所やタイトルなどを一部書き直しました。
エピソードの内容は全て事実なので、患者個人が特定されないように配慮しましたが、患者家族は自分たちのことが書かれていることに気付いていたと思います。
事前に一切承諾を得ていなかったのですが、幸いクレームを受けることは一度もありませんでした。10年を超える月日を要しましたが、書きたいと思ったことはほぼ全て書くことができ、満足感のうちに筆を置くことができました。
その後、外来の看護師が、80回分の新聞の切り抜きをファイルにして、外来の待合室に置いてくれました。目を通した患者家族から、「本にしないのですか」と尋ねられることが何度かありました。