撮影隊がやってきた
建物が古いのと造り酒屋という設定が一致したという理由で、あるときテレビ番組の撮影に、明治十八年建造の母屋が使われることになった。
金曜日のゴールデンタイムに放映される、お定まりのサスペンス。殺人事件が起きて、主役の青年が探偵役になって事件を解決するというものだという。
「殺人事件のドラマですか」と渋る私に、スタッフはあっけらかんとして、
「殺人現場の撮影は箱根のもう一軒の酒屋で撮ります。それとうまく合成しますので、こちらはこの囲炉裏と箱階段を使わせてください」
こちらの思惑としては、ほんの少しでもよいから自社の製品を映してもらって、宣伝効果を狙いたい。
打ち合わせにきたスタッフに、「あまり期待はしないでください」と釘を刺されながら、映り込みそうな場所に当社の製品をずらりと並べた。
あとで番組放映の際に見たら、期待は見事に裏切られて製品も銘柄も何一つ映っていなかった。
番組が終わって最後に流れる協力業者として、多くの業者の名前とともに会社の名前が一行載っていただけ。
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